今や米作には欠かせない農薬。
日本において農薬は、戦後急速に普及しました。
農薬を使うことで米の量産に成功し、戦後陥った食糧難に貢献したのです。
一方で、農薬による健康被害を懸念する声も上がりました。
しかし、農薬を使わなければ稲が病気に感染したり、害虫に食べられてしまいます。
多くの人々に安定してお米を届けるには、農薬は不可欠なのです。
そんな中、農薬や化学肥肥料を使わずに
自然栽培の米作りに情熱を燃やす自然栽培米農家の方がいます。
その方は、自然栽培歴13年の前田英之(まえだ・ひでゆき)さんです。
米作につく代表的な害虫に、ウンカが挙げられます。
ウンカは、稲の茎や葉にストロー状の口針を刺して吸汁する虫です。
平成に入ってから効果の高い薬剤が開発され被害は減少していましたが
近年のウンカはこれらの薬剤に対して抵抗性が身に付き、進化していることがわかっています。
ウンカの他には、ジャンボタニシも挙げられます。
ジャンボタニシは、1981年に台湾から日本に
食用として持ち込まれたのが始まりです。
しかし、食用としての需要は無く
廃棄され、野生化したジャンボタニシが広く分布してしまいました。
ジャンボタニシは稲の苗を食べるので、農業害虫と言われています。
熊本県菊池市で自然栽培のミナミニシキを作っている前田さんは
これらの害虫に対して、どのように対応しているのでしょうか。
以前、前田さんにこれらの害虫に対して尋ねたところ
「対応も何も、ウンカとか病気がきてもいいよ。
それらの生物がいることで、土壌の菌が豊かになるでしょう」
という答えをいただきました。
ウンカやジャンボタニシが田んぼに棲みついても、排除しないという考えなのです、
前田さんにとって大事なのは「田んぼに生きる生物の量」とのことでした。
農薬や肥料を使用せずに、微生物や虫を多くすることを重要視しているのです。
なぜなら、そのようなお米が腸の微生物によって、良い食べ物となるからです。
前田さんは日々進化することを意識して
毎年、稲作に新しい試みを入れ込んでいます。
自分が進化するほど、作ったお米が進化すると考えているのですね。
食用として流入されたものの
その後害虫として広まってしまったジャンボタニシ。
前田さんはこのジャンボタニシの生態を生かして
田んぼの除草に活用しています。
ジャンボタニシに食べられすぎて苗が少なくなってしまった箇所は
手で一つ一つ補植しています。
無農薬・無肥料での自然栽培米ミナミニシキ作りは令和元年度で13年目となりましたが
特に今年は、収穫時にクモやテントウムシが多く見られました。
さらに不思議なことに、令和元年はウンカの被害がありませんでした。
前田自然栽培米ミナミニシキの田んぼは
無農薬のために、ジャンボタニシをはじめとしたたくさんの生物が生息しています。
この多様な生物の環境が、前田自然栽培米ミナミニシキの特徴の一つであり
ウンカの被害がでない要因の一つなのです。
害虫も地球上の大切な生き物。
何一つ無駄な生き物はおらず、全て生態系のバランスを担っている大切な生き物。
自然栽培農家ならではの考え方ですね。
Tags: 米、害虫、無農薬
Posted by 自然栽培米ササニシキ-在来種・伝統のお米産地直送専門店 at 09:00 / 伝統の自然栽培米作りの現場コメント&トラックバック(0)