こんにちは。自然栽培米専門店ナチュラルスタイルの井田敦之です。
九州では田んぼの稲の収穫が終わった後に、麦が栽培されることが多いです。5月末頃になると麦の茶色い穂が揃っている風景をよく目にします。
一方、冬の間、麦など何も植えていない田んぼもあります。
この違いは一体何でしょうか?
もちろん、麦栽培に手間がかかるので栽培しない方もいますが、自然栽培米農家さんは意図的に裏作に麦を栽培していません。
なぜなら、田んぼと畑では、求められる土の性質が違うからなんですね。
今回は、自然栽培米農家さんに、「自然循環の考え方から裏作に麦を植えない理由」についてお話しいただきました。
自然栽培米農家さんの世界観を少しでも垣間見て頂ければと思います。
九州では、稲の収穫後に麦が植えられている光景をあちこちで見かけます。
では、なぜ稲作の後に麦を植えるのでしょうか?
もちろん、大きな理由は単位面積当たりの収入を増やすためです。
農家さんの労働力は増加しますが、農地の有効活用に繋がります。
同じ面積から一年に多くの収益を上げることができるので、農家さんにとっては収入の向上に繋がるのです。
農家として生活していくうえで、至極真っ当な考え方だと思います。
稲の裏作に麦を植える農家さんがいる一方で、自然栽培米農家さんは裏作に麦を植えません。
その理由は、田んぼと畑では必要とされる土の性質が異なるからです。
これらの土を作る根本的な材料は、それぞれ田畑から出る有機物です。
田んぼの有機物の稲わらを土に返すと、保水性の良い土となり、水が抜けにくくなります。
稲わらには、ケイ酸が比較的多く含まれますが、土壌中で分解すると鉄やアルミニウムと結合するため硬く締まりやすくなります。
また、水田の土は比較的酸素が少ないため有機物の分解が遅いです。稲わらの残渣が粘土粒子と混ざり、ペースト状になるため保水性が良くなります。
一方で、畑の有機物を土に返すと、団粒構造となり、柔らかくふかふかした水はけの良い土になります。
畑の有機物では、ケイ酸は稲わらほど含まれていません。麦わらにしても稲わらよりも少ないです。
また畑では酸素が多い状態で耕耘をするので有機物の分解は進みます。結果として団粒構造の柔らかい土が出来上がってきます。
このように、田畑から出る有機物は、その農産物が育つのに最適な土を作り出すようです。
そもそも、「水田」と「畑」という漢字をよく見ると、「水田=水+田」と「畑=火+田」となり真逆の性質を表しています。
そのため、実際にできあがる土も全く異なるのです。これが、土作りを大事にする自然栽培米農家さんが、稲作の後に麦を植えない理由なのです。
自然栽培農家さんには「自分の田畑に持ち込まず、持ち出さない」という考え方があります。
自分の田畑以外の場所からの有機物や化学肥料なども持ち込まず、
その土地に自然に発生した有機物だけを田畑に返すことを意識しています。
そのため、自分の田畑の中での自然循環をとても大切にしています。
自然循環を意識することで土壌が最適な状態に整っていくと考えているのですね。
自然循環とは?
今回は、福岡県朝倉市の自然栽培農家・松本一宏さんにお話を伺いました。
実は、今回の話はあまり知られていない内容かもしれません。
しかし、自然栽培をされている方にとっては、土作りの中で意識されていることなのです。
田んぼの稲わらを土に返すと、稲に最適な保水性の良い土ができます。
一方で
畑の有機物を土に返すと、柔らかく水はけの良い土ができます。
面白いですね。農作物自身が、育つために最適な土を作っていくのです。
漢字を見ての通り「水田=水+田」、「畑=火+田」と水と火なので全く別物として捉える必要があるというのも新しい気付きでした。
田んぼは水辺と同じで畑とは異なるため、自然栽培米農家さんは一年で稲のみを栽培して、有機物を循環させているのですね。
ご自身の田畑で自然の仕組みを体現しているわけです。
私たち一人ひとりがこの自然循環の考え方を持つことで、
不自然なものを循環させず、環境保全に繋がっていけばと願っております。
Tags: 自然循環, 土作り, 稲の裏作に麦を植えない, 松本一宏
Posted by 自然栽培米ササニシキ-在来種・伝統のお米産地直送専門店 at 09:43 / 自然栽培の世界観コメント&トラックバック(0)
私たち「ナチュラルスタイル」は自然栽培の現状や考え方を広く知ってほしいと思っています。
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【参照元】田んぼの裏作に麦を植えない理由とは?|自然栽培米農家の考える自然循環