水田には、様々な生き物が生息しています。
土の中には、ドジョウやカエルが
稲には、トンボやテントウムシなどがついています。
これらの生き物は、自然栽培において
バランスの取れた生態系を形作るために必要な生き物です。
しかし中には、食害を及ぼす虫たちもいます。
いわゆる害虫と呼ばれている虫たちです。
自然栽培のお米につく虫とはどのような虫なのか
そして自然栽培農家は、どのような虫の対策を行っているのか
ご紹介いたします。
<目次>
稲につく代表的な害虫に、ウンカが挙げられます。
ウンカは、稲の茎や葉に、ストロー状の口針を刺して吸汁する虫です。幼虫、成虫共に吸汁します。
主な種類は、セジロウンカ、トビイロウンカ、ヒメトビウンカの3種です。
大きさや形はよく似ていますが、種によって生態が異なります。
稲に与える被害も、稲を枯らしたり、ウイルス病をうつしたりし、種によって異なります。
これらのウンカはそれぞれ、生息している地域も異なります。
セジロウンカとトビイロウンカは、稲以外の植物上ではほとんど生活できないため
分布範囲は一年を通して、栽培稲や野生稲がある熱帯地域に限られます。
しかし、風にのって長距離移動する性質を持っているため、毎年、夏には日本などにも飛来します。
一方、ヒメトビウンカは温帯性のウンカです。
稲以外にも、小麦など多くの稲の雑草で生活できるため
中国、台湾、韓国など、東アジア一帯にかけて生息しています。日本でも北海道まで分布しています。
これらのウンカたちは、江戸時代から時折大発生を繰り返してきましたが
平成に入ってからは、効果の高い薬剤が開発されて広く使われるようになり
以前のような激しい被害は出なくなりました。
しかし、平成17年頃からは、これらの薬剤に対して抵抗性がついたウンカが出現し
ここ5年ほど、日本ではウンカの被害が続いています。
これらの原因は、飛来の元である中国やベトナム北部で、薬剤が大量に使われていることによります。
最近では、いくつかの薬剤に対して抵抗性が発達していることがわかっています。
従って、一つの有効成分で、3種のウンカすべてに効く薬剤がなくなっているのです。
熊本県玉名市の前田英之さんは
稲につく虫や病気に対して、実に面白い考え方をしています。
以前、前田さんにウンカ等の害虫に関して尋ねたところ、前田さんは
「対応も何も、ウンカとか病気がきてもいいよ。
それらの生物がいることで、土壌の菌が豊かになるでしょう」
という、排除の考えは全くなしでした。
虫や病気がきてもOK!と考えているのです。
前田さんにとって大事なのは「田んぼの生物量」とのことでした。
農薬や肥料を使用せずに、微生物や虫を多くすること。
なぜならそのようなお米が腸の微生物によって、良い食べ物となるからです。
殺虫剤や除草剤を使用しないのに
なぜウンカが寄り付かないのか。
それは、多様な生き物たちが
田んぼに中にバランスの取れた生態系を作ることで
稲を守っているからです。
害虫の天敵が、害虫を食べてくれるのです。
自然の力を信じ、自然に任せる。
農薬のなかった時代も
多様な生き物たちの活躍で
稲が生き生きと育っていたことでしょう。
令和元年度の九州の稲作ではウンカが大発生し
その後、台風の影響で稲が倒れ、収穫が非常に厳しい年となりました。
しかし、前田自然栽培米ミナミニシキの水田では
不思議なことにウンカの被害がありませんでした。
無農薬・無肥料での自然栽培米ミナミニシキ作りは令和元年度で13年目となりましたが
特に今年は、収穫時にクモやテントウムシが多く見られました。
前田自然栽培米ミナミニシキの田んぼは、無農薬のためにたくさんの生物が生息しています。
この多様な生物の環境が、前田自然栽培米ミナミニシキの特徴の一つであり
ウンカの被害がでない要因の一つなのです。
令和元年のミナミニシキについて前田さんは次のように語っています。
「今年は、稲の花もキレイに咲き、稲の色合いも美しいです。
今年の新しい試みは、除草の時に田んぼに溝切をすることで
ジャンボタニシを排除するのでなく共生共存を試みました。」
毎年挑戦を繰り返すミナミニシキは年々と力強くなっているように感じます。
自分が進化するほど、作ったお米が進化すると考えているのですね。
Tags: ウンカ、被害、害虫、無農薬
Posted by 自然栽培米ササニシキ-在来種・伝統のお米産地直送専門店 at 09:00 / 伝統の自然栽培米作りの現場コメント&トラックバック(0)