こんにちは!自然栽培米専門店ナチュラルスタイルの井田敦之です。
農業は異常気象や病害虫の発生など思いもよらない事が起こることは珍しくありません。
大分県日田市で自然栽培米を作られている諌山英城(いさやま・ひでき)さんは、昨年、高台にある田んぼで新しく自然栽培米作りを始めました。
田んぼは高台で景色も良く、気持ちの良い環境だと、諌山さんは喜びました。しかし、いざ栽培を始めると思いもよらない出来事が起こったのです。
それは、田んぼの土質が深く関わっていました。
農業をしていると今回の諌山さんのように思いもよらない事が起こります。しかし、そこから同時に大きな学びもあります。
記事の終わりには諌山さんにお話し頂いた動画もありますので、ぜひご覧ください。
<目次>
諌山さんが農業を始めたのは、今から20年以上前のことです。それまでは東京で働いていましたが、都会の喧騒や生活スタイルが自分に合わなくなり、大分県に戻り農業を始めました。
諌山さんは、「無農薬しか考えられない」と始めは有機栽培をし、10年ほど前から自然栽培に切り替えました。
現在では1.5町の田んぼを自然栽培で管理していますが、ありがたいことに、「諌山さんに田んぼの管理を任せたい」と言ってくれる方もいて、徐々に面積が増えてきています。
諌山さんのように、一枚一枚の田んぼの面積は狭いけれども、たくさんの枚数の田んぼを管理している農家さんは他にも多くおられます。今回は、そんな諌山さんが直面したある問題を共有致します。
諌山さんが新しく作ることになった田んぼは高台にあります。そこは見晴らしが良く、昔は宇佐神宮の荘園だったそうです(※荘園:貴族や寺社が管理していた農地)。お米作りには最適な環境だと思った諌山さんは、その田んぼで無農薬・無肥料のお米を作ることにしました。
ところが田植え後、水を入れたのに溜まりません。その田んぼはいわゆる水が溜まりにくい「ザル田」といわれる所でした。
ザル田とは、水がザルから滴れ落ちるように、地下に水が浸み込みやすい田んぼです。ザル田は平地と違い、砂や小石、火山灰が多く含まれているため、水持ちが悪いといわれているのです。
諌山さんの新しい田んぼは水が溜まらないために、草が繁茂しました。稲と同じ高さの草でいっぱいになってしまったため収量も激減。諌山さんは、平地の田んぼと同じ土質をイメージして「荒起こし」と「代掻き」をしてしまったことが原因だといいます。
・荒起こし:土を荒く掘り起こして、上下層の土を入れ替えること。
・代掻き:田んぼに水を入れ、土を細かく砕くこと。
代掻きをすると、砕かれた土の粒が水を含み、粘土のように田んぼ全体を覆うため水が抜けにくくなります。
諌山さんは、来年は代掻きの回数を増やし、細かく粉砕すると仰っていました。
諌山さんは現在、20枚以上の田んぼを管理していますが、今回の新しい田んぼは「今までで一番個性のある田んぼだった」と言います。人間に個性があるように、「田んぼにも個性がある」と仰っていました。
米農家さんはその田んぼの個性を見極めて、水田管理方法を変えていく必要があるのです。
今回は、平地と高台の場所の違いがございましたが、いろいろな米農家さんと話をしていると一本小川を挟んでこちら側と向こう側で土質が違う、さらには味が違うということもあるようです。
お米作りでは、土質によって栽培管理方法も異なり結果として味も異なることもあるのです。
大分県諌山さんが経験した
思いもよらなかった事とは!?
私たちがお届けしているお米を食べたお客様から、「同じ農家さんのお米なのに、前回の米と今回のお米の味が違う」と仰る方がおられました。それは今回のように、田んぼにも一枚一枚、個性があるからです。
また、年度によっても天候条件が異なるために味が異なります。
現代の一般市場において、均一な品質の方が重宝されてきたために、均一が普通だと思う方がおられるのだと思います。社会が均一重視の価値観を築いてきたので仕方ありません。
しかし、よく考えると不自然です。
農産物は本来自然の産物で個性に溢れています。
そう考えると、今食べているお米は、もう二度と味わえないのかもしれません。
どうぞ今日食べるお米を一粒一粒噛みしめて味わってみて下さい。
Tags: 自然栽培米, 無農薬, 田んぼ, 個性, ザル田, 代掻き
Posted by 自然栽培米ササニシキ-在来種・伝統のお米産地直送専門店 at 12:08 / 伝統の自然栽培米作りの現場コメント&トラックバック(0)