熊本県八代市の自然栽培米農家、稲本薫さんは、自身オリジナルの自然栽培米「稲本1号」を育てています。
稲本1号は、熊本地震で引き起こされた塩害を奇跡的に生き抜いた稲から生まれたお米です。
稲本さんは長年自家採種をしてきました。自家採種を続けると、稲にはそれまでとは異なる特性が現れる傾向があります。
稲本1号は、長年の自家採種で稲に自然への順応力が身に付いたことで、塩害を耐え抜いたのでしょう。
今回は、稲本1号が生まれた詳しい背景と、味の特徴についてご紹介します。
<目次>
塩害は、自然災害などにより海水が農地に入り、作物の生育を妨げる害を言います。
海水が農地に入ると土壌中の塩分濃度が高くなり、浸透圧によって植物の水分が土壌中に流され、根が枯れてしまうのです。
海岸部など特に海に近い地域では塩害被害に遭いやすく、作物だけでなく建物などにも被害が及ぶこともあります。
2016年に起こった熊本地震では塩害が起き、稲本さんの田んぼもほぼ全滅状態だったそうです。
異常気象よりも塩害の方が厳しいと言われる中、稲本さんの稲は奇跡的に生き残っていました。
塩害を耐え抜いた稲。
実は稲本さんは、塩害被害に遭う4年前から、このような稲の存在に気付いていたそうです。
熊本地震による塩害を生き抜いたことで、稲本さんの気付きは決定的なものとなり「すごいことになる」と確信したそうです。そして「自分の味方になってくれる品種になるだろう」と。
稲本さんは翌年、その稲を試験栽培しました。すると、透明感のある玄米ができたそうです。食味を確かめるために、周囲の人に食べてもらったところ、みんな口を揃えて「美味しい」と言ったそうです。
辛口評価をする友人からも「今までの玄米より美味しい」と言ってもらい、お墨付きをもらえて嬉しかったと稲本さんは言います。
稲本さんが試験栽培したお米の美味しさは「ぬか」にあるのではないかと稲本さんは教えてくれました。
稲本さんは、塩害を耐え抜いたそのお米を「稲本1号」と名付けました。
そして、稲本1号の玄米が美味しい理由は「玄米を包んでいるぬかの皮が薄い」と考えています。皮が薄いから透明感があり、玄米を食べやすくしているのだと。
だからこそ、玄米食を好んで食べる人には是非稲本1号を食べて欲しいと思っています。
稲本さんは、自然栽培歴37年という自然栽培の大家です。
自然栽培を37年続けるというのは、並大抵のことではありません。慣行栽培が99%を占める中で自然栽培を行うには、相当な覚悟や信念、努力が必要です。
殺虫剤などを使用しないことから虫が寄り付くと思われ、周囲の農家から「うちの田んぼにも虫がつく」と言われるなど、理解されないこともあります。まるで「変人扱い」なんですね。
それでも自然栽培の可能性を信じ、邁進してきた稲本さんもまた稲本1号と同じく、逆境を乗り越えてきたのです。
稲本さんが「天からのプレゼント」と語る稲本1号を、是非たくさんの人に食べて欲しいと思います。
Tags: 自然栽培、無農薬、自家採種、塩害、あきたこまち、稲本1号
Posted by 自然栽培米ササニシキ-在来種・伝統のお米産地直送専門店 at 23:45 / 伝統の自然栽培米作りの現場コメント&トラックバック(0)